ハリネズミの願い

トーン・テレヘン作、長山さき訳、新潮社発行。

私がふと立ち寄った本屋でこの本を手に取ったのは、かわいらしいハリネズミが描かれた表紙と帯に載ったキャッチコピーにとても魅かれたからです。『世界一孤独なハリネズミの世界一愛おしい物語』。たくさんの動物がいる中でハリネズミが主役であるこの作品、ハリネズミはどうして孤独なのでしょうか。2017年本屋大賞翻訳小説部門など3冠受賞しているこの作品は、読み始める前からワクワクが止まりませんでした。

クスッと思わず笑ってしまうシーンは読み始めた直後からあります。ハリネズミは自分の家に他の動物たちを招待するため手紙を書きます。しかし最後に「でも、だれも来なくても大丈夫です」(6ページ引用)と書き足します。さらに他の動物たちが来てくれるか不安なハリネズミは、せっかく書いた招待状を戸棚の引き出しの中にしまってしまうのです。ハリネズミの不安はおそらくこの本の7、8割ほどを占めているのではないでしょうか。そんなハリネズミをかわいいと思うのと同時に、なんだか親近感を覚えました。親近感というより、自分と重ね合わせてしまうのかもしれません。周りとつきあう中で、「絶対相手はそんなことまで気にしないよ」、と思わずツッコミを入れられそうな心配をしてしまう、あるいはしたことがある人は少なくないかと思います。そんなハリネズミの話を読んでいると、自分と重ね合わせて応援してあげたくなります。周りとつきあうことにちょっと臆病になってしまう人、一人でいることが「好きなように」振る舞っている人。そんな人たちにぜひこの本を勧めたいなと思いました。

登場人物が全員人間以外の動物であることや、その動物たちの行動が実際にありえそう、特徴的だな、と思わせる描き方なので、非常に読みやすいと思います。絵本ではないのに絵本のように感じた不思議な作品です。こう言うとこの本は、子ども向けのように聞こえるかもしれません。しかし読みやすいだけではなく、思わず真剣に考えてしまう哲学的な話や言葉が出てくるので、大人向けの作品であるなと思いました。